店舗スペースの限界や社会構造の変化で目まぐるしく変化する百貨店業界。
京急電鉄とのコラボ企画など積極的にEC事業に取り組む株式会社京急百貨店が、ECサイトにおけるクレジットカード決済の不正対策に乗り出した。
今回、不正対策を行った経緯と不正検知ツールである「ASUKA」の活用法について、担当者に話を伺った。
貴社の商材やECサイトの特徴について教えてください。
当社では、お中元をはじめ、お歳暮・おせち料理・クリスマスケーキと言った食品関連の商品を中心にお取り扱いいたしております。その他にも、京急グループ唯一の百貨店のECサイトという特徴を活かして、京急電鉄とのコラボ企画も実施しています。
当社のECサイトでは立ち上げ以降、お中元やお歳暮などと言ったギフト販売や対応は、店頭からECへと移行しつつあり、ECでの購入は年々増加しております。
また、店頭販売のデメリットとして「売場のスペースに限りがあること」が挙げられますが、そういった【売場の補完】という役目においても、ECサイトでの販売に注力しています。
当社の方針としても、EC事業は将来性が高く、ますます成長していく分野と捉えていますので、引き続き強化を目指しております。
貴社のユーザーの特徴は?
主なターゲットとなる世代は40代〜50代ですが、最近ではスマートフォンの普及とともに20〜30代の男性顧客からのアクセスや購入が増加傾向にあり、若年層からのアクセス・購入も増加しました。
また、ECでは24時間アクセスが可能という特徴もあることから、店頭での営業時間外となる20時以降に購入することができることも、若年層の顧客獲得に繋がったのではないかと考えています。
不正対策をすることになったきっかけを教えてください。
「ASUKA」を導入する前は、不正検知ツールは導入しておらず、目視による確認のみで不正対策を行っていました。
不正によるチャージバック被害が全くなかったということはありませんでしたが、基本的には不正対策ができていました。
そのため、正直なところ、担当者間では不正検知ツールの必要性を感じておりませんでした。
先述にもあったEC事業の強化という社内方針も踏まえ、将来的に増加しうるクレジットカードの不正利用は未然に防がなければならないと体制を変え、不正検知ツールの導入を推めることとなりました。
実際に目視確認による工数はそこまでかかっていなかったのでしょうか?
いえ、確認の工数はとてもかかっておりました。
「ASUKA」の導入前は、社内のPOSシステムで注文情報を参照しながら帳票の確認をしたり、怪しい購入者による注文の出荷を止めたり、と様々な部署を跨いで不正防止の対応をしていました。
導入後は、「ASUKA」のダッシュボード画面から一目でユーザー情報が把握できるので、少人数でも不正ユーザーを漏れなく見つけることができるようになりました。
ダッシュボード画面も入社半年の担当者も運用ができるくらいシンプルでわかりやすく、「ASUKA」のおかげで担当者全員でユーザー情報や怪しい取引を連携しながら、注文者の目視確認を行えています。
その他にも、「ASUKA」によって怪しいユーザーの判断材料が増えたことで心に余裕を持って不正対策が実施できるようになったほか、担当者ごとにムラがなく属人化することのない不正対策運用も実現しました。
今では、導入後の目視工数はほぼゼロとなり、不正対策に対する心のゆとりができたと実感しています。
不正検知ツール導入における懸念点はありましたか?
先ほどもお話しした通り、当社では他のECサイトと比較してもご年配のお客様が多く利用されています。そのため、不正検知導入によってECサイトの見た目や購入ステップなどの改修が必要になることを懸念していました。
しかし、導入によりユーザー側での見た目や操作性の変化がない「ASUKA」は安心して導入できました。
また、ご年配のお客様の中には、EC購入時に項目欄の記入を打ち間違えるなど、不正検知というよりもECでの購入操作に困る方もたまにいらっしゃいます。
やはり上記のようなお客様は、商品がスムーズに購入できないと電話での問い合わせで確認をされますので、そういったお電話があった場合に「ASUKA」のダッシュボード画面でユーザー情報を確認しています。
「ASUKA」からは、お客様の買えなくなった原因がわかりますし、正規のお客様だった場合、購入ができるような設定も備わっているので、カゴ落ちなども心配することなく、クレジットカードの不正利用対策ができています。
お客様を案内する担当者が「どこで決済に引っ掛かっているのか」というポイントを「ASUKA」のおかげで把握しやすくなったことは、お客様へ的確に案内する上で非常に役立っていますね。
不正対策や、不正検知ツールの運用をする上での懸念点はありましたか?
ECを担当して思いましたが、不正利用についてはチャージバックやクレマスアタックなど専門用語が非常に多い上に、対策方法などの情報も少なく、不正対策をする中で非常に混乱していました。
ですが、アクルさんでは「ASUKA」導入後も、定期的にミーテイングを実施して下さり、不正を分析してくれるコンサルタントが適宜、当社の不正状況や不正ユーザーの傾向について共有をしてくれるので非常に助かっています。
不正対策や運用についてはもちろんのこと、EC経験が少ない担当者にとってもわかりやすく丁寧にサポートしていただけるので、不正に対する知識もついてきました。
その他にも、不正対策運用でお客様とのやり取りで困った際に、アクルさんのコンサルタントに相談すれば迅速に対応いただける点も、お客様・会社のどちらにとっても導入して良かったなと感じた点ですね。
数日後に対応…となってしまっては、お客様の購買意欲の低下やトラブルも避けられないので、お客様が安心してスムーズに購入いただけるECづくりにおいて、このスピード感でご支援いただけるのはありがたいです。
「ASUKA」の導入の背景はなんだったのでしょうか?
元々利用していたECサイト構築会社さんが「ASUKA」と連携しているということで、
「ASUKA」をご紹介いただきました。
連携しているということもあって、サービス導入にもそれほど時間がかからないことと、
クレジットカードのオーソリゼーション前段階でユーザーの検知が行えることから「ASUKA」を即決しました。
また、当社では「ECサイト運用において、お客様が安心して購入できる環境を整えること」という方針から、2023年度に発表された3Dセキュア2.0も検討し、導入しています。
3Dセキュア2.0と「ASUKA」を併用しているんですね。
はい。やはりクレジットカードの不正利用は、業種業界問わずにあらゆる方法で今後も増加することが予想されます。
義務化される3Dセキュア2.0の導入により、チャージバックにより決済代行会社からの連絡はなくなったものの、3Dセキュア2.0の導入の裏で不正利用が起こる可能性もあり、完全に不正利用を防ぐことはできません。
当社では、ユーザーの購入段階ごとにセキュリティを強化することが重要と考えておりますので、併用して不正対策に取り組んでいます。
また、3Dセキュア2.0導入の影響により、お客様から「3Dセキュアのパスワードがわからない」といった決済注文がうまく進まないというお声もいただきました。
カゴ落ちの懸念も多い3Dセキュア2.0の導入として、「ASUKA」で中リスクと判定されたユーザーにのみ3Dセキュア2.0の認証をかけることも可能なので、そのようなお客様に負担のかかりにくい運用も現在は検討しています。
セキュリティ面でも、購入のしやすさでも、3Dセキュア2.0の導入のみでは不十分だと感じていますので、引き続き3Dセキュア2.0と「ASUKA」を同時に活用していく予定です。
今後の貴社のEC事業において「ASUKA」をどのように活用していきたいですか?
「ASUKA」では自社での不正傾向や分析による対策支援はもちろんのこと、ASUKAを導入された他の企業様の不正ユーザーの情報なども参考にしながら精度を向上されています。
当社側でも積極的に不正ユーザーを「ASUKA」へフィードバックすることで、さらに不正検知の精度の向上が期待できますし、他店様での不正対策の強化にも繋がると考えています。
業界ごとの不正傾向や狙われている商材なども参考にしながら、不正対策を強化していきたいですね。
また、当社としても、今後はますますECでの販売を拡大していく方針で事業を進めております。
これまでも、先述した【売場の補完】という役目だけでなく、京急電鉄とのコラボ企画といった全国的な販売計画も展開・実施してきました。
日本全国の方が利用されるECサイトとして安全な運営を行う必要がありますので、尽力していきたいです。
最後に一言お願いいたします。
不正対策として可能な限り手を打つ姿勢は、ECを運用する上で必要不可欠です。
EC担当である私も、ツールの導入当初は「不正が起きてから考えれば…」と考えていましたが、今ではトラブルが起きないような万全なECサイトを運営するために「ASUKA」を導入していて正解だった、と改めて感じました。
また、導入した当初と比較しても、不正手口の巧妙化や「ASUKA」でブロックした怪しい注文の増加が見られるので、確実に不正を働くユーザーが増えつつあると認識しています。
同時に大量アタックのような不正被害も起きていますし、クレジットカードのオーソリゼーション前段階での検知ができる「ASUKA」の必要性を感じました。
お客様がECで安心してクレジット決済で購入いただくために、今後も積極的に「ASUKA」を通じて不正対策を行っていきたいです。
京急百貨店の担当者さま、インタビューのご協力ありがとうございました!