セレクトショップの御三家として知られている「SHIPS」はアウトレットモールやショッピングモールに多くの店舗を構えているので、みなさんも一度は訪れたことがあるのではないだろうか?
そんな「SHIPS」はここ数年でオンラインストアにも力を入れているという。彼らに「SHIPS」の歴史、哲学、オンラインストアの位置付け、そして不正対策についてのアプローチについて、同社の萩原氏、高橋氏に話を伺った。
アメ横の「三浦商店」が始まりー
1952年、上野アメ横にて米軍の放出品を扱う1.5坪ほどの「三浦商店」から始まり、1970年頃より”ミウラ”の屋号にて本格的に輸入もの衣料を扱うようになり、1975年にSHIPSの前身となるMIURA & SONS 渋谷店を開店した。その2年後の1977年に東京・銀座に「SHIPS」の1号店がオープン。今では全国で約80の店舗を構えており、2025年で50周年を迎える。アパレル業界ではかなりの老舗企業だ。
業態としてはいわゆるセレクトショップの先駆けとしてスタートし、現在では「SHIPS」「SHIPS any」という二つのレーベルを軸に、メンズ、ウィメンズ、キッズのアパレルと雑貨をメインに幅広い層や多様なテイストから構成される商品を展開している。
「”Stylish Standard”をコンセプトに、伝統を重んじながらも「新しい、カッコいいもの」をセレクトショップとして提供していきたいと考えております。」
「SHIPS」におけるECとはー
約80店舗のお店を全国展開しているSHIPSはリアル店舗での売上比率も高い。彼らにとってのECはどういった位置づけなのだろうか。
「コロナ禍を経てECの重要性は益々上がり、売上や利益の創出という観点でも企業戦略として事業の拡大は必至でありながら、弊社は長年リアル店舗の構成比が高く占める小売りの企業としてやってきていたので、リアルとデジタルをどう融合させていくかをずっと考え、進んできました。」
やはりコロナ禍をきっかけにECの重要性が高まったというが、単純にECに舵を切って行くというわけではなく「SHIPSならでは」の戦略を考えているという。
「リアル店舗ならではの価値も同時に高まるばかりで、弊社のようなリアル店舗とECどちらも事業として大切にしていきたい会社としては、ECを売上の側面だけに捉えず、顧客接点やサービスのハブとしても進化を続け、共創するための大きな柱として成長させていきたいと考えています。」
過去取り組んできた取り組みの代表例は、次のような考えによるものだ。
「「買えるものがあるのに買えないという」最大のネガティブ体験を極力減らすため、長年にかけて在庫・販売スキームを整え、リアルとデジタルの融合をさせています。」
具体的にはSHIPSでは、ECに在庫がなくても店頭の在庫を取り寄せて購入できる「店舗取り寄せ注文」に始まり、ECのスキームを利用して店頭の気になる商品をお取置きできる「店頭試着サービス」。また希望の店舗に在庫がなくてもEC在庫があれば取り寄せ可能な、いわゆる店舗受取といった「取り寄せ試着サービス」。また、店頭に希望の色やサイズがなくてもEC在庫があればそのまま店頭で決済し、商品は自宅に配送可能な「店頭決済サービス」などのサービスを展開している。
「ほとんどがECの売上にはならないのですが、リアル、EC問わず全社における各チャネル間での最適な販売スキームを構築し、お客様満足度の向上に努めて参りました。やはりそれぞれの顧客接点の中で、ECを使ってどれだけ回数を増やせるか、また感動体験を生めるかという戦略のもと、クロスユーザーの向上と、全社売上の促進にも繋がるため、引き続き進化し続けていきたいと思います。」
彼らが考える「不正対策」とはー
そんな中、ECに付き物なのがクレジットカード決済における不正注文だ。ここ数年でアパレルECは不正集団のメインターゲットになってしまい、SHIPSのオンラインショップも漏れなくその対象となってしまったという。
「チャージバックが発生した時点で当社は資産である在庫を失うことになります。
また、昨今不正に対する意識が強まっているとはいえ、不正被害に遭われた方からすると利用されたサイトへの不信感を抱くことにも繋がり会社の信頼にも影響が出てきますので、その対応にはリソースを割いてでも取り組む必要があります。」
不正注文が発生すると売上はもちろんのこと、在庫そしてお客様からの信頼も失ってしまうため、対策は外部ツールを使ってでも防ぐ必要があると考えた。
「SHIPS」にとっての「ASUKA」ー
彼らは「ASUKA」を2021年に導入することになるのだが、実は数年前から不正注文に悩んでいたという。
「自社サイト運営当初から不正注文=チャージバックとなる注文は少なからずありましたが、2018年に集中的に狙われた時期がありました。当時ノウハウや社内でのルールも乏しい状態でしたので、見抜けないことも多く、当時のチャージバック金額が高額になってしまったこともあり、不正注文の防止策の検討が入りました。」
実際に多くのECサイトが自社サイトを立ち上げたばかりだと不正対策に明るい担当者も不在で、それを目視チェックで止めるにしてもノウハウが無くチェックに引っ掛けられないケースは多い。
SHIPSでも2018年当時は、注文単価にボーダーを設けて、注文者の名前、配送先情報、日に1回注文を目視でチェックしていたという。その運用である程度の不正を防ぐことはできていたのだが、不正の手口が年々巧妙になっていき、目視チェックだけで不正利用を止め切ることができなくなってしまった。
サイト規模の拡大に比例して増加するチャージバック金額に歯止めをかけるべく、2021年に本格的に不正検知サービス導入の検討を始めることになった。
「チャージバック金額が増加傾向にあったことでカード会社様からもご指摘いただき、3Dセキュアや不正防止サービス導入の早期検討に至りました。数社様の不正検知サービスを検討させていただいた結果、シンプルな設計、使いやすさ、コスト面を加味し、ASUKAの導入を決めました。」
ASUKAの機能面が決め手となり導入に至ったのだが、アクルの不正対策に対するスタンスも共感できる点が多かったという。
「不正に関していろいろ調べているとアクルが発信している情報を見る機会が非常に増え、3Dセキュア2.0の評判や不正顕在化加盟店(オーソリ承認低下措置)といった情報も深く知ることができました。チャージバックを0にすることはできないのですが、それを放っておくことが2次、3次被害に繋がるということを発信しているアクルに共感することができました。」
今後の「ASUKA」の活用ー
2021年にASUKAを導入し、それ以降不正注文の発生水準は低く抑えることができている。
しかし先述の通り不正利用者は手を変え品を変えやってくるので、それに対して引き続き対策はし続けていかなければいけない。そんな中彼らは「ASUKA」をどう活用していくのか。
「ASUKA自体の機能アップデートがあるため、そのアップデートを活用しながら、そして継続的なルールのチューニングを行っていくことによって不正検知の精度を上げていきたいと考えています。直近ではASUKAでコミュニティ機能(※)がリリースされましたので、業種に限らず不正に関する情報共有をできる場として非常に期待しております。自社にはない傾向の情報共有やそれに対する対応方法といった非常に有意義な時間だと感じております。ASUKAのコミュニティ機能で同じような場を作ることができれば、業種は違えど同じツールを利用しているので解決しやすいことも出てくるのかなと想像しております。」
※「コミュニティ機能」:ASUKA加盟店間でコミュニケーションを取ることができる機能。掲示板的な機能であるため、業種関わらず不正の傾向や不正対策のノウハウなどの情報を自由に共有できるのが特徴。
引き続きSHIPSでは、ユーザーに店舗・ECを融合させて満足度を向上させる施策を実施していく。その上でECにおける不正注文はSHIPSだけではなくユーザーに対してもネガティブな影響を与えてしまうため、できるだけを最小限に抑えていくことはマストなようだ。今後もASUKAを活用しながらセキュリティレベルを向上させていき、安全なECサイト作りを目指していく。
SHIPSサイト
https://www.shipsltd.co.jp/