様々な詐欺のトレンド
弊社では過去数年間に渡ってクレジットカード不正利用の傾向を調査していますが、近年の不正の手口がより巧妙になって来ている事がわかります。詐欺を行う犯罪集団も、一度に大金をだまし取る手口と、小規模な金額を複数回だまし取る手口とを巧妙に使い分けている傾向があります。
一度に大金をだまし取る手口の代表的な事例と傾向としては、2014-15年に被害が拡大した、銀行口座を狙い不正送金を行う事例や、コンビニエンスストアに設置されているATMから、同時多発的に大金がだまし取られる事例もありました。コンビニエンスストアのATMからの出金被害においては、日本のクレジットカードやキャッシュカードのIC対応の遅れを、国際的な犯罪集団に狙われた可能性も示唆されています。
また、直近では大手航空会社に対し、「送金先の銀行口座に変更があった」という旨のメールを不正に送付し、業務委託手数料をだまし取る事例(ビジネスメール詐欺)がありました。
JALが振り込め詐欺被害 「航空機リース料」信じる
日本航空は20日、約3億8千万円の「振り込め詐欺」の被害に遭ったと発表した。取引先になりすましたメールで航空機リース料などの支払いを要求され、応じてしまったという。同社は20日までに、警視庁や振込先銀行のある香港の警察、米連邦捜査局(FBI)に被害届を出した。
被害は、米国の金融会社からリース契約で導入している機体(ボーイング777型)の支払いをめぐって起きた。日航の説明では、取引のある金融会社の担当者を装うメールが9月25日に届き、支払口座を香港の銀行に変更したと伝えてきた。送信元のアドレスは画面表示上、担当者のものと同じだったため、日航側は信じて同月29日に約3億6千万円を送金した。翌10月、本物の金融会社から督促があり、だまされたことがわかったという。香港の銀行からはすでに金は引き出されていた。
このほか日航の米国にある貨物事業所にも似た手口のなりすましメールが届き、8月と9月に、計約2400万円をだまし取られたという。日航は、口座情報の確認を厳格化するなどの対策を講じたとしている。
出典: 朝日新聞デジタル JALが振り込め詐欺被害 「航空機リース料」信じる(2017年12月20日)
クレジットカード不正利用の傾向
一方で、クレジットカード不正利用の傾向としては、一回に大きな金額での不正購入をする事例は年々減少傾向にあり、3万円を下回る比較的少額の不正購入を、複数のECサイトに対して行う事例が増加傾向にあります。大手のECサイトが多額のカード不正利用による被害を受けて、不正対策を強化した事が背景にあると考えられています。
加えて、カード不正利用における近年の特徴としては、不正の「分業化」があげられます。高齢者がターゲットにされる振り込め詐欺において、ターゲットから現金を受け取る「受け子」、ターゲットに電話をかける「かけ子」、本人に成りすまし銀行口座から現金を引き出す「出し子」などの呼称は記憶に新しい所ですが、カードの不正利用においても同様にPCから不正購入を行う役回りの人物と、配送された商品を受け取り、指定された所に転送する役回りなどの分担が見受けられます。
具体的には、TwitterなどのSNSを通じて「受け取った荷物を指定先に転送するだけの、簡単なアルバイト」として荷受け役を募集し、カード不正利用を行う事例などがあります。
「荷受け役」募り、個人情報盗む=スマホ詐取容疑、男逮捕
他人のクレジットカードなどで購入した商品の受け取り役を「荷受け代行」のアルバイトとして募り、応募した人の名義で勝手にスマートフォンを契約したとして、警視庁サイバー犯罪対策課は15日までに、詐欺などの疑いで、容疑者を逮捕した。
逮捕容疑は3月、東京都の30代女性の名義でスマホ1台(約11万7000円)を契約し、だまし取った疑い。同課によると、容疑者はインターネットの広告掲示板に「自宅でできる簡単な事務作業」と求人情報を掲載。面接時に免許証などを提示させ、個人情報を取得していた。
同容疑者はこうした情報を利用してスマホを契約。支払いは不正に入手した別人のクレジットカードを使っていた。他にも化粧品など約340点(計約600万円分)をネットで購入。女性ら応募者宅などに届けさせて回収し、転売していた。同容疑者は荷物1個当たり500~1000円をバイト代として渡していた。女性にはその後、後払いなど約100万円分の請求書が届いたという。応募者は男女10人ほどおり、同課が捜査している。
出典: 時事通信社 「荷受け役」募り、個人情報盗む(2017年12月17日)
上記の事例では、単純に荷受けのアルバイトに限らず、犯罪集団に自身の免許証などを共有してしまっているとの事で、この免許証等の本人確認書類を用いて携帯電話の通信契約まで行ったとの事、こうした個人情報の不正利用により、また別の場所で不正を企てていた可能性があります。
この様な被害を未然に防止するためには、事前にこうした被害事例などからリスクを把握する事が非常に重要になります。