3Dセキュア導入による変化
まず前段として、3Dセキュアが導入されると次のように環境が変わってきます。
1. 不正利用が起こった際の未回収(損失の負担)がネットショップではなく、カード会社(イシュア)へ原則* 移行します。つまり、カード会社側で損害が発生するということになります。
*ブランドルールによってはチャージバックが発生することがあり、ネットショップの被害が0になるわけではありません。
2. 3Dセキュアの導入により、一時的に不正利用は減少するものの劇的には減らず、2~3割程度の減少、逆にさらに多くの不正が発生するネットショップも発生。
不正が減らない理由としては、以下のような理由が考えられます。
- 3Dセキュアに連携されるべき項目が足りていないため効果的に不正を防御できない。
3Dセキュアは2.0へアップグレードした際に連携できる項目数が増えました。
しかしネットショップからそれらの項目が連携されてきません。
その理由としては、【連携項目を追加する開発が重い】
【連携項目が必須ではないため1.0の時と同じ運用をしている】などが考えられます。
- 3Dセキュア導入によりお店の不正対策が甘くなる。
今までは不正が起きるとチャージバックが発生しお店の損害となっていましたが、それをカード会社が負担してくれるため、お店としては最低限3Dセキュアを導入しておけば何もしなくても良いという認識を持ちがちです。そうなると、今まで防ぐことができていた取引までもチャージバックとなり不正が増えてしまうということが発生し、現在もなお相次いで起きています。
3Dセキュアの導入により「不正による被害がカード会社が負担する」「不正が減らない」となると、どういったことが起こるのか?
2、3年先には、ネットショップにて今まで普通にクレジットカードで買えたものが買えなくなるということが起こります。
どういうことかと言いますと、にわかに信じがたいことなのですが、カード会社が不正利用者を制限するだけではなく、真正利用者までも買えなくしてしまうという、クレジットの承認率の低下が起こります。
つまり、今までネットでは使い勝手がよかったクレジットカードが使いづらい決済手段となることを意味します。
なぜそうなってしまうのか?
カード会社は不正での被害を避けるべく、転売価値のある商品や高額なものを販売している店、不正被害が多い店からのオーソリ(カード取引承認)については、不正か真正かに関係なくカード会社(イシュア)がOKとしない事態が発生します。カード会社が、10万円の取引から得られる収益は、貸倒などのコストを考慮すると、10万円のうちの0.5%〜1.0%ほどとなります。
つまり、10万円あたりの儲けは、金額換算で500円〜1,000円となります。その10万円の取引が不正利用となると、収益に見合うリスクではなくなってしまいます。
期待値が「赤字となる地獄ゲーム」への参加
目の前の箱の中に100枚のクジが入っています。
1,000円もらえる当たりが99枚、10万円罰金の大ハズレが1枚、大ハズレの出現率が1%というゲームです。
さてこのゲームにあなたは参加したいですか?
仮に一人で全てのクジを引いたとしましょう。その場合、1,000円×99枚=99,000円と▲100,000円×1枚=▲100,000円で、収益は1,000円の赤字となります。
このゲームを10人でやることになれば、もはや罰ゲームの世界で期待値では誰も儲からず、みんなが赤字になるゲームです。
1,000円もらわなくていいから、クジをひいたことにしてゲームに参加しているふりをするのが正解の世界です。
「3Dセキュア導入の不正利用発生率が1%のネットショップ」から飛んでくるオーソリをOKとするかしないかのカード会社の判断については、上記ゲームと同じことが起こりつつあるということです。
このゲームを魅力的にするには、当たり金額を多くする(=加盟店手数料の値上げやリボや分割払いの推進)ハズレクジの数を減らす(不正排除の質を上げる)など、ゲームのルール変更が必要となります。
3Dセキュアの導入が浸透し始める世界では、クレジットカードは承認率が下がり使い勝手の悪いものとなり、カード会社がルール変更をすることでネットショップが負担する加盟店手数料が上がるという可能性が高まります。
クレジットカードユーザーとしての実体験として
実は週末にエアコンの追加購入をしようとしたら、リビングのエアコンまでも故障し、2台エアコンを購入する羽目となりました。(エアコンの購入には嬉しさもワクワクもなく、ただただ手痛い出費です)3Dセキュアが導入されているメジャーな価格比較サイトで検索を行い、カード決済ができる一番安いお店から購入を2度*に分けて行いました。
*店が違うと決済が別となるため
1度目はフリクションレスで3Dセキュアの画面表示とならず無事決済完了。
2度目はなんと、使えないとエラー表示となりました。
せめてチャレンジ認証で画面を出してくれても良いのに、それすらも出てきてくれません。
カード会社(イシュア)側で価格比較サイトからのそこそこの金額のオーソリが2度飛んできたので、ゲームから降りたのでしょう。せっかくマイレージを貯めているクレジットカードだったのにとぼやきつつも、妻のカードを使ったら、フリクションレスであっさり購入完了となりました。
買いたくない高価なものの購入に、いつものカードでせめてものささやかなマイレージを期待したにも関わらず購入ができず、ユーザー体験としては非常に不満です。
それにもし、これが不正利用者だったとしたら2回目は他のカードであれば簡単に買えてしまうのかと、3Dセキュアも脆さが垣間見れたようでした。
最後に
こういった事態にカード会社に任せておくのではなく、ネットショップとして対応すべきことは、クレジットの不正利用を減らすかクレジット決済に代わる良い決済手段を導入するかが目下の対策となることでしょう。いずれの場合もアクルではソリューション提供が可能です。
特にクレジットカードに代わるものを今のうちに導入検討するのは、今後の売り上げの伸びが変わってくる可能性があるので重要です。今後のカード決済に不安を感じられたネットショップのご担当者様、お気軽にアクルまでお問合せください。